年頭所感

一般社団法人 日本テキスタイルケア協会

代表理事 住連木 政司

住連木代表理事

 環境省などが推進する「サステナブルファッション」政策に関与する産業としてクリーニング業は含まれていない。「ファッションのリユース(再利用)」を担う産業としては「リペア」「古着」となっている。法的にはクリーニング業は汚染を除去するための衛生業種であり、服飾関連産業とは無関係に位置づけられている。

 クリーニング業界団体などは、業法の存在が弱小業者を異業種の進出から守る利権維持装置だと考えているように思われる。しかし、これは衰退する産業の業態改革への障害となっている面があると考えられる。

 高付加価値なビジネスモデルの創造のためには、「汚れ落とし=クリーニング」という衛生業とは区別した専門技術による「繊維製品の品質復元」を目的とする服飾関連産業として位置づけする必要がある。

 専門的な技術として着物文化の一翼を担う「しみ抜き」について、経済産業省は当協会からの「シミ抜きは意図されない不慮の染色の補正である」という照会を理解し、平成27年9月「繊維製品の品質維持・復元技法に係る取扱いが明確になりました」としてクリーニング業法の規制を受けない「繊維製品の品質復元」技法として公表した。しかし、業界団体の圧力によって否定された。これによって「しみ抜き」事業を服飾産業と連携した新しいビジネスモデル創造の機会は失われてしまった。

 社会はプロフェッショナルに対して単なる「洗濯」を期待しているのではない。それは進化し続ける家庭洗濯機やコインランドリーでよいとする傾向だ。

 求められているのは「繊維製品の復元」プロサービスの提供だといえる。そのためには、整形仕上げ、色掛け、リペアなどを統合した高付加価値でフルスケールの服飾品質復元ビジネスモデルを創造する必要がある。

 社会的既成概念としての「クリーニング」(洗濯)と区別して世界標準となっている「プロフェッショナルテキスタイルケア」(略称:テクスケア)という新しい産業を日本にも創造しなければならない。

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